渡辺淳一氏 あなたもがん?

左:渡辺淳一氏 右:新釈・からだ事典  I. Frank H Netter 集英社刊

 

◉間もなく80歳を迎えられる作家の渡辺淳一さんが3年前から前立腺がんを患っておられて、必要最低限の抗がん剤で抑えられているとのこと。ブルータスお前もか?の感あり。山本晋也のインタビューのTV画面を見たかぎりでは薬の中にステロイド系があるらしくムーンフェースの症状で顔がかなり丸くなっていた。だが食べて飲んでいたって元気「まだまだ現役で世界中で誰も描いていないシニア世代の性や死に至る過程を描いて絶筆としたい」と健在ではあった。(昨年「愛ふたたび」を新聞連載し現在幻冬舎から出版)

 

◉数ある渡辺作品の中で私が装幀させて頂いたのは「新釈・からだ事典」(1986)、「新釈・びょうき事典」(1996)の2冊がある(共に集英社刊)。「新釈・からだ事典」は特に思い出深い。カバーの紙質を書店で目立つ面白い銀紙で行こうと閃いたため何もかもが面倒なことに・・・。まず、仕上がりイメージを渡辺先生や出版社に見せなければならないがプリンターなどまだなかった。苦肉の策で画材店主に頼みまくってカラーコピー機に現物の銀紙をセットしてもらってカラーコピーを切り抜いてコラージュしたものをコピーしてもらった。が、厚みがあって何回も引っかかりコピー機が壊れそうになって困った。また印刷も白のオペークインクを下地に敷いてから4色刷りの行程になり、インキが乾きにくいために時間が大幅にかかった。資材課から通常の10倍かかると苦情もあったが編集者の方に押し切ってもらって有り難かった。当初この手の単行本は2~3万部出れば成功で5万部出たらパーティーにボーナス出さなきゃと担当部長は約束されていた。狙い通り書店ではやたら目立っていて遠くからでも光っていた。内容が面白いのに加えカバーデザインが功を奏したのか発売1週間で再版が決定し、その後の出足もやたら早く、大日本印刷の担当者が徹夜徹夜の対応に追われたらしい。5万部を遥かに超え嬉しい悲鳴であったらしいがついにパーティーやボーナスも出なかったが今は懐かしい思い出。ただ27年前に多くのFrank H Netterの解剖画の中から右肺をメイン画に選んでいたことは今を暗示させてとても偶然だとは思えず戦慄したが、より一層愛着が湧く1冊となった。

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